長野県有機農業研究会の公式ブログです。

2010年11月20日土曜日

生命のつながりを考える~獣害問題と生物多様性

北信地区担当の2010年度特別イベントのお知らせです。


(以下、転送・転載歓迎)
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●長野県有機農業研究会主催
  野生肉料理教室 & 討論会
「生命のつながりを考える~獣害問題と生物多様性」
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日 時 11月27日(土) 10:00~13:00 野生肉料理教室・昼食付き
              13:00~15:00 討論会「獣害問題と生物多様性」

場 所 長野市ふれあい福祉センター
    (長野市役所・市民会館の東側)4F 調理実習室
     *お車の方は市役所の駐車場をご利用ください
      (混む場合がありますので、できるだけ公共交通機関の
       ご利用をおねがいします)。

参加費  料理教室(昼食付き)1000円(非会員は1500円)
      討論会 無料

定 員  料理教室40名、討論会50名
     (会員先行予約、11月上旬一般広報以後は先着順)

申込先  遠藤夏緒(農楽里ファーム)
       TEL&Fax 026-266-3034
       メール:norari@grn.janis.or.jp

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【料理教室】
講師:井上不二子
シカ・イノシシなどの野生肉を使い、ご飯と一緒に気楽に箸でつまめる
料理を研究しています。近い将来、野生肉レストランを開設すべく奮闘中。
今回の料理教室では、「シカのしぐれ煮とその応用」を予定しています。

【討論会】
コーディネーター:太田和夫(NACS-J自然観察指導員、元埼玉県立自然史博物館学芸員)
パネラー:
井上不二子(前述)
柴本 勤(中野市にて柴本無農薬菜園を主宰)
大内英憲(坂城町で有機農業を始めて5年目。農園名はファームさいかち)
長野県野生鳥獣対策室(野生鳥獣行政を担当、被害対策や保護管理計画を推進)
長野県自然保護課(自然保護行政を担当、現在は生物多様性長野県戦略(仮称)を策定中)
岸元良輔(長県環境保全研究所専門研究員、哺乳類生態を担当)

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【開催趣旨】
近年、野生動物による農業被害問題がたいへん深刻になっています。
人里に下りてくるツキノワグマやニホンザル、分布域を急激に拡大し
ているニホンジカやイノシシ。特にニホンジカは、長野県における昨年
度の農業被害額が約4億円に達し、捕獲数は1万8千頭を越えています。
なぜ、このような状況になったのか、生物多様性の視点から獣害問題と
今後の農業のあり方を討論したいと思います。あわせて、生命のつなが
りに感謝しつつ、シカなど野生肉料理教室を行いたいと思います。

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【なぜ、野生肉を利用するの?】(井上不二子)
いわゆる「害獣」の食肉利用の話には、「獲らなければならない」「食
べていかなくてはならない」という論調が多くあります。これは、動物の
食害がよく知られておらず、まだ人々がシカやイノシシを獲ってよいの
か、食べてよいのか分からない状態では必要な論調でした。しかしそ
もそもシカもイノシシも、この日本列島で数千年の伝統を持つ食材です。
先祖がそれらを食べて遺伝子を紡いできてくれたからこそ、我々は今
ここにいるのです。そしてそれらは現在の我々の味覚にとっても、申し
分のない肉なのです。このような素晴らしい食材が天然でたくさんとれ
ることは、本来喜ばしいことのはずです。それを「害」「問題」という形で
しか認識できない我々の、自然との関係がおかしいのです。昨今の長
野では、一般の方にも随分と食害の問題は知られてきています。「食
べなければならない」「食べるべきだ」、といったどこか他人事の発想か
ら、「食べよう」「食べたい」に発想を転換し、山の恵みのありがたさを分
かち合うことで、生命の有機的関係の中で生かされる自分を発見するこ
とが、今あえて野生肉を食べる意味なのではないかと思っています。

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【なぜ、獣害問題が起きるの? 】(岸元良輔)
じつは、獣害問題だけでなく、限界集落、山村文化の消失、自給率の
低下、食の安全など多くの農業問題は、突き詰めてみるとグローバル
経済に原因があります。食料・木材・石油など化石燃料を輸入するか
ら、獣肉が利用されず、里山が放置されて野生動物の生息地になり、
農山村の過疎化で野生動物が里に下りてくるバリアーがなくなってい
ます。

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【「生物多様性」は生命のつながり】 (岸元良輔)
今年10月にCOP10(生物多様性条約締約国会議)が名古屋で開催さ
れます。「生物多様性」とは、多様な生物のつながり、つまり生命のつ
ながりを意味します。農業は大地をたいせつにし、土や水や生き物と
のつながり、すなわち生物多様性の中で営まれるもの。それなのに、
現在はすべてが経済優先の競争社会、農業も化学肥料・農薬を使用
した大規模生産でないと生き残れない時代。でも、自然を食い尽くしな
がら成長するグローバル経済が破綻するのは目に見えています。今後
は地域で自給自足できる有機農業こそが見直される時代です。
人と自然、人と人とのつながりを大事にした農業とはどのようなものか、
獣害問題を切り口にして生物多様性の視点から討論できればと考えて
います。